少女☆歌劇レヴュースタァライトTVシリーズ上映&樋口達人氏トークショー③

立川イネマシティでの『少女☆歌劇レヴュースタァライト』上映+樋口達人さんのトークショー(通称スタァライト概論)第3回目に参加しました。
今回は「人間・西條クロディーヌ」がテーマに含まれると聞き、前回以上に必死でメモを取りました……が、追い付けなかった部分も多いので、自分の言葉で補完していることもあります。ご了承ください。

スタァライト制作陣によるトークイベントではお馴染みの「作品は誰かが受け取って初めて完成するもの。観た人が感じたことが正解。答えはそれぞれの中にある」という言葉を念頭に、早速当日のメモを書き起こしていきます。

今回のテーマは「終わりの続き。劇場版への線路。」でしたが、メインの話題は「人間・西條クロディーヌ」でした。嬉しすぎる。
そして今回はモグリの受講生・古川監督も参加。随所で軽快な古川節を発揮されていました。

サブタイトルなどについて

まずは先週予告されていたサブタイトルのお話から広げてクロちゃん以外について色々と。この日の上映回である9~12話について少し触れられました。

・11話のサブタイトル「わたしたちは」は舞台#1を観て「舞台少女心得」をアニメに使おうと制作序盤に決めたということもあり思い出深い。
・ひかり失踪の答えが戯曲の中にあるというアイデアにOKが出た時、やっと監督に認めてもらえたと感じた。(古川「それまで認めてなかったみたいじゃん!?そんなことないよ!」)
・アニメの物語の外側にストーリーを入れたいという思いから、9~12話あたりは文字情報の密度も高くなってきた話数。
・戯曲「スタァライト」は語ってしまうと風化する。樋口さんや中村彼方さんの中には存在しているけれど、それが表に出るまでは観客の中にあるものが正解。
・戯曲「スタァライト」の劇中で女神の名前が変化していることについては過去に発売されたパンフレット等を参照。

上記の文字情報として例に挙げられたのが、クロちゃんの部屋に飾られている日本演劇大賞の賞状を贈ったのが天堂真矢の父であるというもの。
ブシロードのスタッフに「天堂祐一郎はどんな人物?」と聞かれたことがあり、樋口さんの中で考えていた案が話されました。
真矢の父は役者としての実績が豊富で、自身の劇団も主宰していて、めちゃくちゃモテる。何度目かの結婚で生まれたのが真矢で、結構歳が離れた父親。もしかしたら異母兄弟もいるかも。
あくまで樋口さんが個人的に考えた設定なので、真矢の父については「誰か書いてください笑」だそうです。監督も面白いと頷きつつ、「次はあなたたちの番ですよ」とファンの妄想を後押ししていました。

もしこのアイデアをベースに真矢とクロディーヌの関係を考えたら、ものすごい因縁ですね……自分以外の家族がいる父親が認めた同い年の舞台少女って、業が深すぎません??天堂真矢ちゃん(小学生)が天才子役クロちゃんに向ける感情、もしかしたらなかなかに複雑だったかもしれない。

人間・西條クロディーヌについて

とんでもない爆弾アイデアが出ましたが、ここでお待ちかねのテーマが開始。
クロディーヌはなぜTVシリーズでは描き足りなかったのか。これについては「私よりも他の子を描いてあげて」とクロディーヌに言われた気がしたから、だそうです。冒頭からオタクの情緒は乱されました。

もう少し具体的に掘り下げていくと、クロディーヌはオールマイティーなので、ストーリーの起点や解決のポイントになれる(だからTVシリーズでは毎回登場する)。
スタァライトの先日譚を描いた漫画「オーバーチュア」(全舞台創造科、読んでください。オタクより。Kindleのリンク貼っておきます→少女☆歌劇レヴュースタァライト オーバーチュア)でも、色々持っていることが描かれている。
子役として活躍していて、環境や周囲の人にも恵まれていたクロディーヌは、そのまま進んでも良かったのにどうして聖翔音楽学園に来たのかなど、背景に物語があるキャラクター。クロディーヌも色々と悩みや葛藤を抱えているが、先読みして自分で解決してしまう。

このような理由もありTVシリーズでは描き切れなかったが、クロディーヌは感情が豊かでわかりやすいキャラなので愛されている。
キャラクターについては樋口さんがレーダーチャートを作っていた。「脚本家ってこんなこともやるんだ!」と驚いたらしい監督。必ず作るという訳ではないそう。
レーダーチャートには演技力、歌唱力、表現力、学力、女子力などの項目があり、一番バランスが良いのがクロディーヌで、次いで純那。ひかりは部屋が片づけられないという情報の影響で女子力がゼロ、真矢は偏りが大きくてトゲトゲした形。

クロディーヌは子役として活躍していたこともあり勘が良く、人から求められていることが分かり、それに応えられる。人に求められてこその自分、という意識がある。そんな自分に対する苛立ちも感じている。
また、芸能界では致命的である「必要とされなくなる」ことへの恐怖を知っている。それが面倒見の良さや世話焼きに繋がっている。
これについて監督から「でも打算的ではない」という補足がありました。もう、いい女過ぎて苦しいです……。
打算ではなく、舞台が好きだからこそ。

クロディーヌは、舞台は人間が作っているものだと知っている人。
それが11話の「舞台は私達の心臓、歌は鼓動、情熱は血」というセリフに現れている。ひかりは運命の舞台に対して神に身を捧げるような行動をしたが、クロディーヌは舞台は人間のものだと否定した。
劇場版ではもっと大きな神を否定する。

クロディーヌの人間性については劇場版のEDでバイトをしている姿として描かれている。これのヒントになったのは宇多田ヒカルが活動を休止した際にインタビューで答えていた「人間活動をしたい」という言葉。クロディーヌも芸能漬けで、普通の人のように自分で稼いで生活するということは経験が無い。
真矢を超えることは聖翔での目的だが、「真矢を超えた自分」がなりたいものかはわからない。
環境も周りの人も揃っている中で、ゼロからスタートするためにクロディーヌが選んだのが劇場版ラストで選んだ進路。

クロディーヌは一番人間らしいキャラクターだからこそ描きにくかった。演じている時と日常のボーダーが最も少ない。生粋の舞台少女。
クロディーヌが人間らしいキャラクターになったのは、相羽さんの影響が大きい。
監督も絵コンテを描いている時に、ついつい相羽さんの姐御気質な人柄に引っ張られていた。(古川「さっきまでクールなバンドリーダーだったのが、あんなに気さくなおねーちゃんなんだよ!?」)

スタァライトのキャストが決まった時、「どこにロリがいるんだよ!?」ということで西園寺かのんが消失して、今のクロディーヌが生まれた。(「ロリいるじゃん!」「誰だよ!」とじゃれる監督と樋口さん)
西園寺かのんにはキャラデザのラフ絵もあったが、オーディションの時に「こいついなくなります」と話した。
TVシリーズでは描き切れなかったが、クロディーヌはスタリラのメインストーリー第2章の削劇シリーズや、TVシリーズのBDBOX特典のOVAでは大暴れしている。

TVシリーズから続くスタァライトの話

OVAで3話ずっと華恋が素振りをしているという不思議な絵面を考えたのは監督だと言い張る樋口さんと、記憶が無いという監督。
スタリラ第2章の各タイトルは全部監督が考えたものらしいが、これも記憶が無いらしい監督。
スタリラのメインストーリー「アルカナアルカディア」は、スタァライトメソッドに基づき、スタァライトを別の角度から見たストーリー。スタリラからビルドアップして劇場版が作られた。
劇場版では尺が足りなくて使えなかった、目を奪うキラめきの熱量、スタァライトを演じる舞台少女のキラめきが過去に影響して戯曲「スタァライト」が生まれるループ構造などのアイデアを再生産したのが「アルカナアルカディア」。劇中歌を中村彼方さんが作詞されていて豪華。古川監督に無許可でアイデアを詰め込んだ、いわば樋口達人版ワイルドスクリーーーンバロック。
スタァライトのスタッフ同士もお互いのキラめきで再生産し合っている。
スラリラも作品の解像度が上がるので、ぜひプレイして欲しい。(オタクからもお願いです。アルカナアルカディアの西條クロディーヌさん、本当にいい女過ぎて世界どころか宇宙の頂点を超えたので、見てください)

質問コーナー

Q.クロちゃんの子役時代の収入はどれくらい?1億円以上だと嬉しい。
A.古川「子役がどれくらいもらえるかがわからない。親とか事務所が持っていくんじゃない?むしろ質問者がどうして1億円にしたのかが気になる。サラリーマンの生涯年収とかじゃないんだ」
この質問、私のものでした。本当はクロちゃんには3億円以上稼いでいて欲しいです。でも以前、ロロロパンフに乗っている仕事歴のみで収入を妄想したら3400万円くらいになったので、遠慮して1億にしました。

Q.劇場版スタァライトはカルト映画を観ているような脳になります。これは見ておけ!という映画はありますか?
A.古川「フィールド・オブ・ドリームス(脚本がめちゃくちゃで好き)」
樋口「ガンヘッド(あんなデカくてムダな物がドンパチするのが最高)」
この質問では、しばらく監督と樋口さんのオタクトークが盛り上がっていました。

Q.キャラクターの誕生日はどうやって決めた?
A.大人の事情もある。アニメ放送期間は3ヶ月しかないので、そこに全員あつめるのは無理。華恋とななは放送時期に合わせた。ななの誕生日で始まり、華恋の誕生日に最終回を迎えたが、華恋の誕生日が一致したのは偶然。
他のキャラクターについては女性スタッフに丸投げした。樋口さんたちはキャラクターの誕生日に萌えを感じないので、そういうのが強い人に任せた。
ただし双葉はバイクの免許問題があるので早くした。バイクの二人乗りには一年以上の運転経験が必要。
双葉のバイクを決める際、キネマシトラスのバイク乗りたちがケンカをしていた。バイクおじさんたちによる激しいプレゼンを受けた末に選ばれたのがホンダ。

Q.8話のひかりのセリフ、減っていた130gのセレクトについて
A.監督の「130g減ります」というアイデアをすごいと思った樋口さんが、それに応えるために調べたり測ったりして探した。20~30個の候補の中から、普通の女の子だけど普通の女の子が選ばなさそうな物を採用。
イギリスの地名や現地の硬貨を使ったのはキャラクターの要素から考えた。臓器を入れようと言う話は最初からしていた。女の子が選びそうなものの最後にゾッとする物をいれたいという考え。

Q.純那の武器が弓で一人だけ遠距離にした理由やそれによる苦労について
A.純那は接近されたらどうするんだ?という疑問は話し合った。
剣ばかりだとバリエーションが少なくなってしまう。弓は物語でスイッチにもなるし、舞台映えもする。そこからキャラクターや関係性に対してどの武器が合うかを考えて決めた。

Q.乙女心がわかっていると評判の樋口さんが脚本を書く上で意識していること
A.古川「乙女心というより、キャラクターと人間に対して真摯だから。キャストがキャラに共感して、女性だからこそ乙女心がわかると評されたのだと思う。」
樋口「スタァライトはリアルな人間が演じているので、キャラクターに寄り添うことが必要。昔、「今時のJKはこんなこと言わないよね」と声優さんに言われてへこんだことがあり、作り物のセリフではダメだという意識がある。」

Q.27歳公務員の方。アニメ制作がしたくて美大に通っている。アドバイスをください。
A.古川「公務員も良い仕事だと思う。小出副監督も元公務員。自分も25歳で業界入りした。ただ、美大に通う必要があるかは疑問。とりあえず現場に飛び込んだりして、準備に時間を掛けすぎない方が良いかも。目指す作家像が絵なら美大に行くのも良いと思うけど。とりあえず年齢を気にする必要な無い」

Q.劇場版で好きなセリフやシーンはありますか?
A.古川&樋口「あります!(完)」
古川「華恋がTになるところ!」「全部好きだよ!」

Q.アイデアに詰まった時の打開策は?
A.樋口「寝る。一旦切らないと燃料不足になってしまう。」
古川「寝て起きた時に罪悪感ある?」
樋口「あります」
古川「この罪悪感が怖いので寝ずにやり続ける。TVシリーズを作っていた時は炭水化物を抜いて寝ないようにしていた」
炭水化物を抜くやり方に小出副監督は「そんな方法あるんですね」と感心していたものの、小出さんは一生やらないらしい。
樋口さんも寝ずに書き続けていた頃があったが、良い結果は出なかったので寝るようになった。
最後はシネマシティのスタッフさんに話を振り、「知らない道を歩く」と答えると、「そこは映画を観るって言って欲しかったなぁ~」と監督が弄って質問コーナーも終了。


どんどん時間が伸びていく樋口さんのスタァライト概論、今回もとても楽しかったです。50分と言われて少し身構えましたが、体感は20分でした。
西條クロディーヌ推しとして、クロちゃんのお話をたくさん聞けたのが嬉しいです。
子役経験からくる勘の良さとか、生粋の舞台少女とか、漫画やスタリラでそれを感じる描写があったので、なんだかんだ色々なところでクロちゃんの人間的な魅力は描かれていたんだなぁ、という嬉しさもありました。この辺のソースについても語りたい!けどレポートのノイズになりそうなので自重しました。別の記事で書こうかな。
クロちゃんの魅力の新発見や再発見も盛りだくさんな非常に有意義な講義でしたが、どこまでもわがままで欲張りな観客なので、これからの展開で今まで描けなかった魅力をもっと見せてくれ!と願って止みません。

アニメの上映も最高でした。「星々の絆」は歌ももよちゃん&もえぴの演技もめちゃくちゃ音質が良くて、もはや泣きながら笑っちゃいました。
映画館のスクリーンで観る「スタァライト」も!砂漠の夜が明けるシーンが大好きなので、本来の画角(?)で観られて幸せでした。ありがとうシネマシティ。

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