クーベルチュールさん主催の劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライトの生オーディオコメンタリーに参加しました。
本編についてのコメンタリーはアーカイブ配信(https://couverture.zaiko.io/item/348693)があるので割愛し、現地のみの舞台挨拶についてのレポート&感想です。本編コメンタリーと記憶が混ざったり、2時間盛りだくさんの話を聞いた後なのでそもそも記憶が飛んでいたりします。いつも通り、だいたいこんな話がありました、くらいの内容です。
舞台挨拶、ゆるっと開始
生オーディオコメンタリーが終わると、会場限定の舞台挨拶が開始。
冒頭から「小出くんは俺の絵が嫌いなんだ」のやりとりが再演されていました。
「テレビシリーズの時からすぐ直す。俺の絵を見ながら清書するんだよ」
「僕は考えながら描くから……」
「ななと純那みたいな関係」
「良かれと思ってやるやつね」
こんなやりとりを五年前からずっとやっていて、それを樋口さんは「仲が良いな」と思いながら見ていたそうです。
その後、イベントを後ろで見ていたアニメプロデューサー武次さんが古川監督に呼ばれて急遽登壇し、監督・副監督・脚本・プロデューサーの4名による豪華な舞台挨拶となりました。
劇場版を走り抜けた原動力
古川監督がスタァライトをここまでやれたのは1話のダビングを終えた時の「このアニメ絶対おもしれー!」という武次Pの言葉のおかげ。劇場版制作時も、武次Pが「私やっぱり映画が好きです」と言っているのを聞いて、作って良かったと思ったそうです。
武次さんは元々映画好きで学生時代に映像関係を専攻にされていたとのことで、古川監督はそういう方に喜んでもらえたのが嬉しかったそうです。武次さんも、スタァライトは映画好きとしての夢をたくさん叶えてもらえた作品だったとか。
監督は武次さんの要所要所での何気ない言葉が励みになっており、一方の武次さんは「たくさんの作品が世の中にある中でスタァライトを手に取ってくれたファンがいたから頑張れた」と。ファンとしてもありがたいこを言ってくださる……と思った矢先に「無難なこと言っちゃった」と反省する武次さん。
愛を込めてスタァライトを「トンチキアニメ」と呼んだり、「崇高な趣味をお持ちで……」とやんわりとファンを変人扱いしてきたりと、とても面白い方でした。
劇場版を作ろうと言い出したのも武次さん。テレビシリーズの打ち上げで朝まで飲んでいた勢いで「劇場版作りましょう!」「監督、映画好きでしょ!」「劇場版作るって言いましたね!」と全力で言質を取っていたそうです。
古川監督は「狂ってるのかお前ー!」と返したそうですが、いざ劇場版が出来上がってくると「こんなトンチキアニメを作る人には(狂ってるとは)言われたくない」と思ったらしい武次さん。
ファンとしてはどちらも狂人。狂ったみなさんに感謝です。
アニメスペシャルではなく劇場版を作るにはどうすれば良いのかを改めて考え、参考に観たのは『おもひでぽろぽろ』。監督たちは「すげえ!邦画だ!こんなの無理だ!」と思ったそうです。体験にすることでしか勝負できないと思い、モチーフとして選ばれたのが電車。
ブシロード作品はファン層が若く首都圏の人が多いので、映画館へ行くには多くの人が電車を使うだろう。映画を観に行く時や帰る時に「レヴューが始まるかも」と思うような体験をしてもらうのが狙いだった。
公開から一年が過ぎた今でも、電車の音を聞くとスタァライトに意識が引っ張られるので、監督の掌の上だと脱帽です。
スタァライトの制作進行は特殊
映画ってストーリーが無くても作れるんだな、と話す樋口さん。映画にはストーリーを説明するシーンが入るけど、スタァライトはそれを削ぎ落として映像の中に盛り込んでいる、と。
「ストーリーありますよ!」と否定しながらも「卒業する!!」と超端的にまとめてしまう監督。
ラフカットを繋げた時点で2時間半あったものを圧縮したという劇場版スタァライトは、削ぎ落とす中で生まれた穴を脚本、歌詞、音楽、絵などがそれぞれで埋めあって作った。普通、脚本は制作の序盤で仕事が終わるが、(スケジュールとしては間違っているかもしれないけれど)スタァライトは最後まで全員で作っていた。
そういった各所の調整でキネマシトラスの後部左側ドアが開かない車(今は修理済み)を転がしながら大活躍していたのが、キネマシトラスの制作担当の森山さんだそうです。
古川「テレビシリーズを作り始めた時は新卒だったのに、劇場版の頃には(腕を組みながら)『ここ直さないんですか?この双葉嫌です、直してください』って。立派になったなぁ〜」
その他にも、
「当初のラフから大幅に(特に新国立のくだりはバッサリ)カットされたことで、逆にスピード感が出た」
「ストーリーや劇中で舞台少女に伝えたかったこと(武次さんのお気に入りは「囚われ変わらない者はやがて朽ち果て死んでいく」)を雨宮さんたちから伝えることができて良かった」
「劇場版スタァライトのような作品は映像、言葉、音楽などのこのメンバーが揃わないともう作れない」
と言った話もありました。
また、司会の方から「スタァライトっぽい作品を作ってと言われたらどうしますか?」と質問があると、武次さんは「嬉しい」と言っていましたが、監督&副監督は勘弁してくれ〜みたいな反応。
小出「スタァライトっぽいってなんですか??それを具体的に教えてくれたら作りますけど、『スタァライトっぽい』って人によって考え方違うと思います」
終演の挨拶
樋口「スタァライトを作っている期間は自分にとっても特別な時間でした。こういう瞬間は人生でいつ訪れるかわからないし、一度体験すると、また頑張ろうという気持ちになる。観てくれた人たちにもそんな風に感じてもらえたら嬉しい」
武次「公開に間に合わないと思うことは何度もあったけど、たくさんの作品がある中でスタァライトを手に取ってくださったファンがいるから頑張れた」
とプロデューサーの模範!みたいなことを言いつつ、「みなさんは普通と違う趣味を持っていることを自覚して、これからもスタァライトを愛してください」と作品&ファンいじりで最後までさりげなく尖っていました。
小出「樋口さんは大人だから表にあまり出さないけど、僕たちはくだらないことでゲラゲラ笑いながら作っていて。とにかく楽しくなりたくて作っているので、ファンのみなさんにも作品を見て楽しくなってもらいたい」
古川「(劇場版スタァライトは)変なズレた作品です。こういう表現をぶつけるような作品は、10年後には無くなります。業界がそういう潮流なので。こんな作品に予算が下りることはそうそう無い。絶滅危惧種みたいな作品を一緒に観られて良かったです。でも20年後くらいに、スタッフの人生も巻き込んでこんな作品が作られたということを刻んだ誰かが、揺り戻しのようにまた作ると思います。その時に『負けねえぞ』と潰しに行けるよう、これからも頑張っていきます」
「おじさん三人が喋っているだけのイベント」
「ファンはここにいる200人と海外に黒魔術信仰者がいるだけだと思ってる」
「(800人が配信を観ていると聞き)母に報告します。醜態を晒しおってと怒られるかも」
「トンチキアニメ」
などと軽快な語り口で面白おかしく映像作りや制作の裏話が聞けた舞台挨拶でしたが、終演の挨拶は4名の情熱が伝わってきて感動しました。
前日にオンラインで開催したリハーサルはもっと面白かった(ただし一時停止や巻き戻しで4時間くらいかかった)とのことで、ご本人たちとしてはもっと面白くできたなと反省のご様子。ファンが3倍くらいのお金を払えば、一時停止や巻き戻しありの大ボリューム版コメンタリーが、休憩ありビュッフェありでできるらしい(?)です。
払わせてください。
崇高な趣味を持ったトンチキファンより。