劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト極爆上演&樋口達人氏トークショー④

立川シネマシティで毎週金曜日の夜に開催されている『少女☆歌劇レヴュースタァライト』上映+脚本家・樋口達人さんのトークショー第4回に参加しました。
もはやただメモを書き起こしただけの備忘録です。今回も樋口さんのお話を私が解釈した要約になりますので、情報の漏れや齟齬があるかもしれません。あくまで参考の参考程度に……。

いつもと同じく、作品は誰かが受け取って初めて完成するので、観た人が感じたことが正解、答えはそれぞれの中にある、という注意事項からスタート。
今回は非売品のバミリーちゃん(華恋Tの模型)も登場ました。

今回のメインテーマは『体感する映画への脚本からのアプローチ』ということで、劇場版制作にあたっての樋口さんのお仕事について。

劇場版ができるまで

まず、TVシリーズはやり残しが無いように、それこそ灰になるまでやりきる、が合言葉だった。そのため新作映画を作ると決まった時は「何やんねん」と思った。
新たな9人の舞台少女が現れて「ふっ、あれが私達の先輩ね」みたいな展開も考えられるが、果たして観客がそれを見たいか?
劇場版を作るにあたり、最初に監督が持ってきたのがロレンスの「自己憐憫」。気高い野生の舞台少女を描くことが決まった。

劇場版ではセリフや音を生っぽいものにしたいという思いが樋口さんにも古川監督にもあり、樋口さんはファーストフード店に一日中居座り、女子高生の会話を書き起こしたりしていた。そうして作り上げた脚本は2時間半分の時間オーバーに。
それを見た古川監督は「うおー!やるしかねぇー!!」という方向に舵を切り、体感する映画がテーマになった。

脚本からのアプローチ

整った脚本で舞台少女が描けるのか?未完成で不安定だからこそ強烈に目を焼く舞台少女だ、という意識から「映画の舞台少女化」をした。
20稿ほどの改稿の間に様々なものをそぎ落としていった。(生徒会長として働く純那、B組の様子、新国立トップの冴草千弦、SF的要素など)
各所で「この映画にはストーリーが無い」と話しているが、ドラマを極限まで高めている。

脚本としては「セリフ」の質を意識した。
終盤で華恋が第四の壁を破るまでの全てのレヴューでは、観客を見ずにレヴューの相手しか見ていないセリフにして、指向性を相手に振り切っている。
当初はもっと説明的なセリフもあったが、古川監督が映像で見せてくれるという信頼があったので、セリフを尖らせていった。
(劇中で象徴的な華恋とひかりのシーンがミケランジェロのピエタ像がモチーフという話題に触れ、「像のキレイな羽をぶっ壊したような脚本」と笑っていました。)

古川監督の衝動と情熱に脚本も動かされていたため、仕事をしているという感触がなかなか得られなかった。
やっと仕事をしたと感じられたのは、「表出ろや」「私はいつだって可愛い」「私今、世界で一番空っぽかも」の3つのセリフを出せた時。

劇場版スタァライトはカルト映画などと言われることもあるが、古川監督は「分かる人に分かればいい」ではなく「観た人を全員ファンにして帰す」という気持ちで作っていた。
これは舞台#1を観た時に感じたものと同じ。
キャラクターも「やるしかねぇー!!」という勢いでレヴューをしているので、それに応えるシナリオを目指した。

質問コーナー

Q.脚本を書くプロセスについて。頭から書くのか、思いついたところから書くのか。
A.仕様書→全体の流れを書いたペラ1枚のプロット→ストーリーを膨らませる→物語の筋ができる→頭から脚本を書いていく、という流れ。
この流れをちゃんとやっておかないと、途中で偉い人達に違うと言われてしまう。それを防ぐためにコンセンサスを取ってから書く(ちゃんとやってても違うと言われることはあるけれど笑)。

Q.劇場版はシリーズのファンだけでなく、初見でもすごいということは分かる作品でバランスが良い。塩梅で気を付けたことは?
A.基本のベースストーリーラインをしっかり敷いてから上げ下げしていくこと。監督は映像で考えるためディテールで話を繋ぐことができるが、文字書きではそれが難しい。
華恋がTになって落ちてきた先で列車に合体して走っていくとか、脚本じゃ無理。そんなものを文章で書いたら「樋口逝っちまったぜ」と言われてしまう。
監督のイメージをストーリーに書き起こしていく作業だったため、コミュニケーションを大事にした。

Q.アニメディアのインタビューで最後の華恋とひかりのレヴューのタイトルは「再生産のレヴュー」と答えていたが、劇中でも他の記事などでも語られていないのはなぜか。
A.「再生産のレヴュー」はレヴューと言うより華恋とひかりのぶつかり合いで、「最期のセリフ」というテロップで表されていることもあり不要になった。
ちなみの冒頭の華恋とひかりのレヴューのタイトルは「別れのレヴュー」。

Q.純那の進路について。進路と言葉をどう捉えれば良いか。
A.ななとのレヴューで一度言葉を捨て、衝動で動いてみようとアメリカへ行った。言葉よりも衝動や感情を大事にしようと思った結果。
元々厳格な両親の元で育っていたのに聖翔に行った時の勢いを思い出した。
レヴューでななと交わした約束に応えるために、純那の武器であった弓(言葉)を捨てた。
お前が渡したんだろと突っ込まれているななの「私の刀返してよ」は監督が考案したセリフ。
いつかまた新しい純那なりの言葉を手にするかもしれないが、今はいらない。

Q.ひかりは聖翔退学後に王立演劇学院に復学した?
A.色々な手段を使って復学したと思う。聖翔の退学書類にキリンの印が押してあったくらいだから、なんとかして復学するでしょう。

Q.「ノンノンだよ」は「青空の向こう」の劇中にあるセリフ?華恋のアドリブ?
A.台本内のセリフ。今まで演じきった舞台がちゃんと華恋の血肉になっている証拠。最後のオーディションのシーンで「スタァライトしちゃいます」と言っているのも、華恋がスタァライトをちゃんと演じきって血肉にしたから。

Q.真矢は王立演劇学院を受験した?ひかりやななのことを中学時代からしっていた?
A.ななのことは知っていたかもしれない。グローバルな要素はクロディーヌが担っているためという理由もあるが、真矢は究極の井の中の蛙でいて欲しい。日本一=世界一と認識している人物。海外の存在を知った上であくまで日本一を目指している。
海外に出たら出たで、飯とか作れるのか?フランス語だったら秘密特訓をしているので大丈夫だが、もし海外に行ったら意外と手がかかるキャラクターかもしれない。
(究極の井の中の蛙・真矢についてはアルカナアルカディアで描かれていましたね。あの真矢様、自分が立つ場所を世界の中心にしてやる、みたいな傲慢さがめちゃくちゃカッコイイです。)

Q.ブシロードはコンテンツを続けたいはずなのに物語を終わらせたが、ブシロードはどれくらい関わっているのか。
A.もちろんブシロードは全てに関わっている。物語をやりきる形で描けたのは武次プロデューサーが身を呈して作品作りを守ってくれたため。だから敬意を表してOP映像で名前に星がついている。

Q.幼少期の華恋とひかりのランチシーンで、ひかりのお弁当に白米が無いのは血糖値スパイクを気にしてのことか。
A.幼稚園児で血糖値スパイクを気にするか!?米を既に食べきっているんじゃないか?それか米だけ別に持っているか。監督or谷さん案件。

Q.今日が劇場版初見の人にメッセージをください。
A.Don’t think! Feel! 体感してもらうのが全てです。

Q.劇場版スタァライトの完全版製作の予定は?クラウドファンディングをやってでも観たい。
A.ディレクターズカット版も出したいけれど、今となっては説明にしかならない。もしリソースがあるとしたら、古川監督からどんなものが出てくるのかを見たい。

Q.スタァライトがきっかけで創作を始めたり再生産された人達へメッセージをください。
A.作品をきっかけに創作を始めてくれた人がいるのは嬉しい。舞台で待っています。いつか一緒に仕事ができる日を楽しみにしています。

口上について

スタァライトの企画当初は、昭和歌謡ショーのような作品を作ろうとしていた。昭和歌謡の語り、セーラームーンや時代劇の名乗りなどのイメージ。
何かが始まるにはスイッチが必要。男性客は舞台を観に行かないと言われていたりと、ミュージカルアニメは企画当時ちゃんと視聴者に届いていないものが多かった。
ミュージカルは演者と観客の共演、共犯関係で成り立っているが、アニメは視聴者の日常の中にある。劇場では演者が「ここはパリ」と言えばそこはパリになるが、アニメは視聴者が振り返れば現実しかない。
口上は観客にミュージカルが始まると意識させるスイッチであり、舞台少女にとっても舞台に立つ覚悟を決めるスイッチである。自分達の現在地を示すためにできたもの。

アニメだけでなくライブやスタリラも合わせれば60個くらいの口上を作った。
どうやって作るかといったら、キャラを想像するとしか。
(トークショーでの質問箱に「樋口さんの口上はありますか?」という内容が入っていたらしく、自分の口上がある脚本家なんているか!?と笑っていました。)
自分の口上は無いが、三回繰り返すという技はある。「見ない、聞かない、調べない」別作品だが「死にたい、死にたくない、お前が死ね」など。
シネマシティの口上を考えて送っていたが、宣伝ツイッターでは使ってもらえなかった。
(メモを取り切れませんでした。純那と真矢の口上を合わせてもじったものでした。)


最後は舞台#4やコンソールゲームの宣伝。
具体的なことは何も言えないが、「あの人達も、あの人も出るよ!」。
古川監督を始め初期から一緒にスタァライトを作ってきた人達が次の駅に行っている中、自分だけ取り残されているような気もするが、駅は里帰りに使う人もいるし、もうしばらく駅員を続けてみようと思います、とのことでした。
私はまだまだずっと続けて欲しいですわよ。

全4回にわたるトークショーはこれで終了。しかしまだまだ全然話題はあるとのことで、深夜イベントをやっちゃいますか、とスタァライト概論留年希望のMCの方とちょっと盛り上がっていました。
やって欲しいけど、深夜はキツイですね……その際はぜひ配信もご検討お願いします。
体力が衰えたオタクより。

極爆は富田さんと岩田さんによる舞台挨拶以来でしたが、各キャラクターのドスの効いた叫び声の聴き心地が特に最高でした!

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