少女☆歌劇レヴュースタァライトTVシリーズ上映&樋口達人氏トークショー①

立川シネマシティで毎週金曜日の夜に開催されている『少女☆歌劇レヴュースタァライト』上映+脚本家・樋口達人さんのトークショーに通い始めました。
配信が無いので、自分用のメモを兼ねたレポートを残しておきます。現地のみのイベントが久しぶりなので自分の記憶力に自信が持てず、物理的にメモを取りながら聞きました。そのため樋口さんの言葉そのままではなく、樋口さんのお話を私が解釈した要約になりますのでご注意を。

まず前提として、以前から制作陣のトークイベントでは毎回言われていることですが、「正解」ではなくあくまで「オジサンたちがこんなことを考えながら作っていた」と受け取ってくださいとのこと。作品は誰かが受け取って初めて完成するので、観た人が感じたことが正解、答えはそれぞれの中にある、だそうです。人には人のスタァライト。

今回のトークテーマは『舞台少女、武器の名称はいかにして生まれたか』。

舞台少女はいかにして生まれたか

まず、なぜスタァライトが舞台少女の物語になったのかについて。
企画当初から9人の女の子コンテンツであることは決まっており、しかしプロジェクトが始動した2015年は既に巨大な9人のアイドルコンテンツ(おそらくラブライブ!)があった。普通に仲良しこよし(言い方は悪いけど、と前置きあり)をやっても埋もれてしまう。そこで、ステージに立つ人たちの内面に切り込んでいく方向性に決めた。

舞台人を描いていく上で、樋口さんの舞台観が大きく反映されているそうで、話題は樋口さんの経験へ。
樋口さんの原初の観劇体験は宝塚歌劇団。尼崎出身で、子供の頃に観に行ったことがあるそうです。その時は眩しくてガチャガチャと賑やかな印象だったそう。
その後大学生の頃に、学生演劇にバイト代を全てつぎ込むような、舞台で身を崩す人たちをたくさん見た。ご自身の観劇経験としても、井上靖、鴻上尚史(人違いだったらすみません。もう一人外国の作家の名前も挙がっていました)など、人間の深いところに切り込む舞台に出会う。また、何かが欠けている人間が舞台で演じることで他人やなりたい姿になる、精神分析や治療としての面も舞台にはあると知った。
これらから舞台とは明るくて楽しいだけではなく、舞台をやる人はある種狂っている人がやるもの、それほど人を熱狂させる魅力が舞台にはある、という舞台観を持つようになったそうです。(『フラッシュダンス』という映画の楽曲の歌詞にある「crazy」という言葉でこの舞台観が腑に落ちた、とも)
この価値観が、後にプロジェクトに参加した古川監督と合致して、スタァライトの方向性が生まれた。この二人でなければ、もっとマイルドな作品になっていた思う、と笑い飛ばす樋口さん。これらの舞台観が「普通の楽しみ、女の子の喜びを捨て……」というキリンのセリフに繋がっているそうです。
「舞台少女」とは、「舞台=狂気」と「少女=未完成」を組み合わせて生まれた、不安定さが込められた名称だそうです。一見普通の言葉の組み合わせですが、深い意味がある、というお話でした。

スタァライトは当初はなんとなく敵と戦うフワッとしたコンセプトだったが、外側ではなく内側に切り込んでいく、ということでキャラクター同士がぶつかり合う内容になった。ただしバトルロワイヤル形式は通常だとすぐに駒が無くなる消耗戦になりがちなので、これは最初に捨てた案だったそう。しかし、幕が上がるたびに新しい人間として生まれて死ぬことを繰り返す舞台の特性が、負けても終わらないオーディションを可能にした。
この辺りが「再生産」という言葉が生まれたきっかけでもあるそうです。

武器の名称はいかにして生まれたか

キャラクターの名前についてはYouTubeで既に話しているので割愛。
9人の武器の名称は「ひかりが舞台で武器の名前を言いたいそうです」という武次Pの注文があり、それなら全員分考えよう、となったそうです。樋口さんはロボットモノの作品を書くことが多かったため、女の子の武器の名前を考えるのは少し苦労した、という笑い話を交えつつ解説がスタート。
武器の名称には各々のパーソナルな部分を反映させる方針で考えられたそうです。

神楽ひかり:Caliculus Bright→Brossom Bright

キラめきを失った少女なので「キラめきの蕾」。そこから再生産されて「キラめきの花」。

愛城華恋:Possibility of Puberty

まず、キャラのイメージに合わせて略称をPOPにしたい、でも意味は残酷にしたいという縛りがあった。
これについては「思春期の可能性」というポジティブにも捉えられる言葉を残酷だと感じる感性がすごく素敵だな、と個人的に思いました。「劇場版の最後に折れるのがまさにそれ」という樋口さんの補足も相まって、やっぱりスタァライトは肌に合うなぁと勝手に実感した解説でした。

天堂真矢:Odette the Marvericks

小出副監督がとにかく真矢のことが好きで、白鳥を入れます!という強い意志があった。白鳥の湖の登場人物名+一匹者という意味でマーヴェリック(正直なところトップガンを意識した)。

西條クロディーヌ:Etincelle de Fierte

意味は「誇りは火花●●●(このあと何か続いたのですが運悪く聞き取れず)」。フランス語を使いたいが制作陣に分かる人がいない……と思っていたところ、中村彼方さんを発見。彼方さんに監修をお願いすることで、武器名にも作中のセリフにもフランス語を使えるようになった。
彼方さんがいなかったら「火花の剣」みたいなダサい名前だったかもと樋口さんは笑っていました。

露崎まひる:Love Judgment

まずキャラクターの個性として、やや病んている、愛が重い。樋口さんの脳内に「まひる棒で窓のサッシを掃除している」というイメージがなんとなくあったことや、岩田陽葵ちゃんがバトン経験者だったことから武器の形状が決定。メイスで叩き潰して戦うスタイル、そしてそれは愛ゆえにだろう、ということでこの名前になった。
余談ですが、「まひる棒」は特に公式で出していない呼び方だったが、たまたま舞台稽古で小山百代ちゃんがあの武器を「まひる棒」と呼んでいてシンパシーを感じたという小話もありました。

大場なな:輪/舞

当初から再演を繰り返すという設定があったキャラクター。誰の発案かは不明瞭だが、二刀流に設定が決まり、そこから一振りに漢字を一文字ずつ当ててそれぞれに意味がある名前というアイデアが生まれた。
まさかこれがロンド・ロンド・ロンドに繋がるとは思っていなかったそうです。

石動双葉:Determinater

意味は「決断者」。双葉は香子と二人でセットのキャラクターなので、つまり絶対に別れる。別れ道を決断するキャラクターなのでこの名称に決定。
カワサキのバイクからインスピレーションを得て生まれた名前だが、双葉が乗っているのはホンダのバイクだったというオチもついていました。あのバイクは少しマニアックで、その道の人達にはセンスの良さを褒められているらしいです。

花柳香子:水仙花

ネット上では花言葉から意味を考察されていることが多いが、水仙に決めたのは花も葉も根も全て毒があるから、というのが理由だそうです。そういう毒のあるキャラクターにしたいという方向性から決定。

星見純那:翡翠弓

一番普通な名前の武器。実は最初は違う名前だったそうです。それは「星空射貫く閃光の意志」「レイディアントシーカー」。(「あのメガネが!!」と樋口さんもノリノリで冗談を交えながら解説)。
個性的な笑い方や「三大〇〇」の言い回しなど、舞台#1の純那はなかなか癖が強いキャラクターだったので、武器名にも癖の強さが出ていた。しかし段々とメガネの記号が強くなっていったことと、アニメの1-2話で主人公二人と絡む重要な役だったため、武器名が普通じゃないとうるさいということで翡翠弓に落ち着いたそうです。
大事なことなので三回唱えられていました、†星空射貫く閃光の意志†。

テーマに沿ったトークは以上で、その後は観客からの質問やメッセージを紹介。こちらも質問、回答ともに要約です。

Q.ひかりのように、他の武器にも変化のアイデアはありますか?
A.強いていうなら劇場版の華恋と純那の武器。武器の変化は次の駅へ向かう舞台少女たちの心理状態を反映している。

Q.ミスターホワイトたちの設定について
A.監督案件です!と笑いを誘いつつ。ミスターホワイトはイギリスの諜報部のスパイ。劇中では頭だけのぬいぐるみだが、実は8等身。あの頭にスラっとした手足がついた絵を見せてもらったことがある。
スズダルキャットはコードウェイナー・スミスの小説に出てくるキャラクター名から取った(おそらく『スズダル中佐の犯罪と栄光』。ワイドスクリーンバロックを調べるとヒットする作品ですね。恐るべし制作陣)。
古川監督たちがゲラゲラ笑いながら8等身の白熊を描いている絵面、なんか想像つきます。

Q.「華恋がちゃんと~」のクロちゃんの歌に2番や別バージョンはありますか?
A.相羽案件です!
アドリブで歌ってと注文を受けた相羽さんが、顔を真っ赤にしながら歌ってくれたそうです(かわいい)。どこでも話題と笑いをもっていく人、相羽あいなさん。別のトークイベントでは、後の話であの歌を歌ってくれと言われて考案者本人が忘れていた、なんてエピソードを聞いたような覚えがあります。

第1回の内容は以上。次回のトークテーマの予告と樋口さんのフォトセッション(???)を経て終了となりました。撮る方も撮られる方も困惑気味な樋口達人撮影会、なんだったんだろうな……面白いので何枚も撮らせていただきました。

スタァライト制作陣のトークイベントにはいくつか参加しており、何度も同じような話を聞くことも増えてきていたのですが(それだけ大事な話ということですね)、今回の樋口さんのトークショーは初出のエピソードが多いです。
失礼ながら、内心「キャラ名の話はもう聞いたけど、まあ何が飛び出るかわからないしとりあえず参加しとこ!」くらいの緩い気持ちでチケットを取ったのですが、樋口さんは今まで話していないことを、と意識してくださっているようで。感謝感謝、感謝ですよ~。
毎週末が楽しみなイベントです。
あと、映画館で観るスタァライトのTVシリーズがそもそも良すぎる。大画面ならではの細かい発見や、今見るからこそ生まれる感情があり、とてもとても良いです。
まひるちゃんがスズダルのワンポイント入りのハンカチを使っていること、初めて知りました。私の妄想じゃなかったんだ!

トークショー中には他にも樋口さんが参考にした作家や作品名が具体的に出ていましたので、もっと詳しく知りたい方は他のレポートも読んでください。これはあくまで私が樋口さんのお話を噛み砕いた書いた文章です。情報漏れも多いです。
殴り書きと拙い記憶頼り、しかも一週間経ってしまっていますので、受け取り方が違う可能性もあります。ご注意を。

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