少女☆歌劇レヴュースタァライトTVシリーズ上映&樋口達人氏トークショー②

立川シネマシティで毎週金曜日の夜に開催されている『少女☆歌劇レヴュースタァライト』上映+脚本家・樋口達人さんのトークショー第2回に参加しました。
今回も樋口さんのお話を私が解釈した要約になりますので、情報の漏れや齟齬があるかもしれません。ついでにメモ用紙の幅を取り間違えたので、内容が順不同になっている可能性があります。あとメモが読めない箇所がありました。キーワードを自分の言葉で補完している部分が多いので、あくまで参考の参考の参考程度に……。

前回と同じく、作品は誰かが受け取って初めて完成するので、観た人が感じたことが正解、答えはそれぞれの中にある、という注意事項からスタート。制作陣のトークは正解や答え合わせではなく、あくまで一つの参考情報、とのことです。
ちなみに樋口さんはスタァライトについて話す現場ではキリンの服を着ていることに、みんな気付いていないらしいです。初耳でした笑
あと映画館で観るRE:CREATEが良過ぎて号泣したそうです。わかります。

今回のメインテーマは『3つの視点で変わるTV版シリーズ構成』。シリーズ構成に3つの視点がある、というのはBEBOX2のブックレットで既出の情報ですが、前回よりも作品作りそのものに踏み込んだ内容となっていました。

3×4、4×3、6×2の構成

簡単にまとめると以下の通り(細かい言い回しはメモしきれませんでした)。
3×4…華恋視点の起承転結形式。再会や再生産の王道ストーリー
4×3…ひかり視点の序破急形式。オーディションの秘密を知っている少女のミステリー
6×2…なな視点の二幕形式。孤独なななが純那に救われる救済ストーリー
ななの物語については別のタイミングでも「表現することしかできない人が居場所をみつける」などの補足がありました。

このような複雑な構成になった理由はいくつかあり、一つは12話で9人を描くには尺が足りなかったこと。そのためペアやトリオの関係性に圧縮してキャラクターを描くことにしたが、それでもまだ尺が足りない。
また、BEBOXが4話×3本で販売されると決まり、4話ごとに切る理由は何だろうと古川監督が疑問を持った。そこでシリーズ構成をキャラクター化した、とのこと。
とにかく9人の舞台少女を描きたいという監督の想いに応えるには、複雑なシリーズ構成でなければならない、九九組は舞台を既にやっているが声優としては未知数だったため脚本の面で最高の舞台を用意したい、という樋口さんの気持ちもあったそうです。
樋口さんが自身の作家性を出すよりもサポート的なことをしようという方針を持っていた頃で、ちょうど古川監督の作家性と出会ったことや、こんな珍しい構成を通してくれた武次プロデューサーのお陰でもある。色々なめぐりあわせで実現したそうです。

そんなシリーズ構成には、いくつも仕掛けがあると語られました。
当初はひかりの回想は別のタイミングを想定していたが、「ななだから大場ななの話は7話!」というアイデアが通ったとか。
舞台#1の時点では再演を繰り返しているという設定だけを持っていたななが、TVシリーズで色々と描かれていき、7話で詳細が明らかになる。ここで過去を眩しがるようなななの気持ちに共感した人はまた最初からストーリーを追いかけ、受動的ではない能動的な「観客」になる、という狙いがあるそうです。
1~7話で再演に関する物語が明かされ、8話でひかりの過去がわかり、9話でイレギュラーな存在である華恋のことが分かる、という流れ。7話8話が連続で回想回であることも構成としては珍しい、とのこと。

この日上映されていた5~8話は、スタァライトのためという側面が如実に表れている話数。特に5話と6話は伏線になっており、まひるの「そっか」や香子の「せや」というセリフがきっかけになる共通した構造で、この人の物語だと視聴者に意識させる。そしてこのあと過去が明かされるひかりやななから視聴者の視線を逸らす目的があった。
まひる、双葉と香子、なな、ひかり、華恋と役者が揃っていきクライマックスへ……となるのですが、浮き上がるクロディーヌを描き切れていない問題。
TVシリーズでは華恋がある種舞台装置になってしまった部分があり、劇場版で人間になったが、西條クロディーヌさんも劇場版で多少補足はしたけれどやっぱり描き切れていない。ということで、次回のトークテーマに「人間・西條クロディーヌについて」が追加されることになりました。

クロちゃんて人間臭さが魅力的なキャラクターなのに人間らしさがあまり描かれていないとずっともどかしかったのですが、これは推しの活躍を無限に求める欲深いオタクのワガママかと思っていました。違った、ちゃんと掘り下げ不足でした。安心したけど嬉しくはない……次回のトークショーと今後の展開に期待しています。ほんと、切実に。
私がクロちゃん贔屓だからというのもあるかもしれませんが、華恋ちゃん並みかそれ以上に舞台装置の役割をこなしていたと思うんですよね、クロちゃんて。

話が逸れました。レポートに戻ります。ここからは観客から集めた質問に樋口さんが応えてくださるコーナー。ここは冒頭にもあった「正解ではない」という注意事項が重要というか、樋口さんの自由な考えを聞かせてもらう部分が多い内容でした。

Q.なぜキリンなのですか?
A.監督案件です。

Q.なぜ9人になったのですか?
A.ブシロード案件です。

Q.純那の苗字が「星見」である意図は?
A.詳しくはYouTubeを。星を掴むために邁進するキャラクターだから、見上げるだけという訳ではないけれど、そういった運命を持っている(掴んじゃったら星掴純那になっちゃう、という冗談も添えられていました)。卒業後は星条旗を掴むためにアメリカへ行った。

Q.設定資料で公開されていないまひるとひかりの宝石の種類は?
A.小出案件です。

Q.純那の両親との設定について
A.ロンド・ロンド・ロンドのパンフレットで、純那の出身校が教育関係になっている。両親は教師かも。舞台役者を目指すのを反対するくらいだからお堅い職業なのでは。この辺りはどんどん広げてOKとのこと。

Q.キャラクターの身長などの設定について
A.スタァライトは舞台があり、キャストとキャラクターの違いも踏まえて明確にはしていない(ふたかおと伊藤生田は身長差が逆、など)。伊藤さんが急にめちゃくちゃ身長が伸びたら~みたいな冗談を交えつつ、公表するとただの数字になってしまう、役者を合わせられないなどの理由があるため非公開とのこと。

Q.劇場版とTVシリーズで華恋のテンションにギャップがあるのはなぜ?
A.2つ説がある。
①「10年後に結婚しよう」みたいな約束はありがちだけど、所詮夢物語。華恋とひかりの場合は華恋が手紙を送り続けることでひかりは燃料を貰っているが、華恋は返事が無い。そのため燃料が枯渇してしまったのかもしれない。
②運命で結ばれてる二人なので、ひかりがいると本気が出せる(ただしやっぱりまひるは報われない、という哀愁を添えて)。
華恋ちゃんも普通の女の子ではあるので、消費してしまったのではないか、という見解でした。

Q.ジュディ・ナイトレイがレヴュー服で帽子を被っていることについて
A.小出案件です。ただ、真矢・クロディーヌ・ひかりだけ授業中のレオタードが学校指定ではないことについて、首席・次席・転校生でイキっているからだと古川監督が過去に言っている。だからジュディもイキっているのかもしれない。または帽子がジュディの本体。

Q.劇場版でのなな→純那の執着について
A.TVシリーズの9話で描かれている通り。

Q.双葉がバイクに乗っている設定について
A.キャストオーディションの時、生田輝さんがショートカットで元気が良く、キャラ立っていたのが印象的だった。そこからインスピレーションを受けて、双葉をヤンキーキャラにしようか、と監督と樋口さんで考え始めた。すると生田さんが合格したため、じゃあ!と先入観から双葉のキャラクターが決まっていった。
バイクに乗っているのに小さかったら面白い、小さいのに一番誕生日が早かったら面白い、と生まれたのが双葉。

Q.舞台#1とtvシリーズで脚本の連携はあったのか
A.原案としてTVシリーズ1~3話を作り舞台チームと共有した。古川監督が舞台#1から11話の舞台少女心得の着想を得たり、舞台#2はTVシリーズのラストから続く幕開けになっていたりと、相互関係がある。連携していないのはTVではキリンが、舞台では走駝先生がいること。

Q.まひると香子、双葉とクロディーヌや青嵐が絡むような普段と違う関係性について、ゲームにも期待している、といった内容のメッセージ
A.青嵐は舞台チームの児玉さんと三浦さんの物なので、樋口さんが色々と考えることは無いとのこと。
ふたかおとクロディーヌの絡みについては没案の紹介がありました。
6話で、香子はやきもち焼きだと知っているクロディーヌが仮面を被り「マスク・ド・シャノワール」となって仲を取り持とうとする話(多分)。中の人ネタにもなるし面白い!と樋口さんたちは言っていたけれど、悪ふざけし過ぎと武次Pに言われて没。双葉にも香子にもそれぞれ即座に正体がバレて「なにやってるんだ(なにやってはるの)」とツッコまれる展開があったそうですが、最終的には香子→真矢のおたべやすがオチになった。
没になったエピソードは他にもたくさんあるけれど、ちょいちょいスタリラで拾われているそうです。

Q.クロちゃんの歌(華恋がちゃんと〜)の2番を考えました。「華恋がちゃんと〜起きられるのは〜まひるのおかげ〜」
A.採用!CD化されるかはポニキャン案件。

Q.舞台少女は樋口さんが出会ってきた人や舞台観が反映されていますか?
A. 9人の執着はできるだけ等身大のものにしようとしていた。例えトップスタァの真矢とクロディーヌのモチベーションについては、普通の人は分からないけれど、焦燥感や空回る気持ちは分かるように。
小ネタとして、クロディーヌの部屋に飾られている賞状について言及されていました。アニメ放送時から話題になっていた天堂さんからのやつですね。あれは真矢の父親から贈られた物で、そんな小道具が真矢とクロディーヌの執着などに関係しているとのこと。
娘の年齢的に天堂祖父かと思っていたのですが、若くして演劇界の重鎮なんですかね、天堂パパ。

Q.レヴューの全組み合わせは決まっていますか?
A.一旦作った記憶はある。キリンも想定していたはずだが、華恋のお陰で奇数になってしまった。キリン案件です。

Q.クロちゃんのベッドは両親から贈られた物?自費購入?
A.(学生寮にでかいベッドを送るのが)親だったらヤバい。
ファンから貰った?ニトリで買った?と色々な案が挙げられましたが、樋口さん的には自分で買った気がすると落ち着きました。他にも、5〜6歳でパパに買ってもらった(買わせた)物を大切に使っているという説も。
この辺りは本当に、正解ではなく樋口さんの反射的な想像っぽい様子でした。

Q.ひかりは自己犠牲はいつ考えたこと?
A.多分4話の約束タワーの下で。華恋がオーディションに参加した時点で計画は崩れているが、聡い子なので万が一の時は、と考えていたかも。

Q.作品作りで楽しいこと、苦しいことは?
A.書いている時が一番苦しい。本読みでは多い時は15人くらいの大人に脚本をケチョンケチョンに言われる(監督が「それも良いと思うけど」とか言うけど、絶対良いと思ってないだろ!と笑いにする樋口さん)。
修正を重ねて絵コンテになった時や、こういう場で作品について語れるのが楽しい。もう書かなくていいので。
TVシリーズでは17〜18稿は書いており、スタァライトを作っていた頃は酒も甘いものも増えていた。

トークショーの本編は以上。
その後はすっかり樋口さんも慣れきたフォトセッションと次回予告で終了。去り際に「来週は監督が来るよ!」と言っていたのですが、冗談かと思ったら本当らしいです。
人間・西條クロディーヌの話は絶対に聞かなければいけないし、次回も参加するつもりです。

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