ブロードウェイミュージカル版「天使にラブ・ソングを ~シスター・アクト~」を観劇してきました。
なぜ突然非オタク舞台を???という感じですよね。これは神のお導きなのです。
ある日ふと思い立って、映画版を観たのです。初めて。
あれだけ有名でテレビ放送も何度もされているのに、初めて。映画を観る習慣があまり無いもので……。
そして、偶然にもふと思い立った日は、主演のウーピー・ゴールドバーグ姐さんの誕生日だったのです。
その翌日に映画を観て、そしてさらに、映画を観た翌日からミュージカル版の東京公演がスタートすると来ましたよ。
これはどう考えても神のお導きでしょう?
ということで、追加販売された注釈付き席(見切れ)を握って行ってきました東急シアターオーブ!
アクセスは渋谷駅から直通だったので、雨でも濡れることなく移動ができて良好。
しかし、縦長で後方席はかなり遠く感じるやら、3階席は手すりが視線上にあるので視界が最悪、トイレもエレベーターもエスカレーターも大渋滞必須……と、不安になる噂が絶えない劇場です。
そんなわけで、わずかに残っていた3階の一番安い席を見送り、見切れとはいえいきなりスタァライトシート並のお値段であるS席を購入しました。
キャストではなく作品目当てで、しかも突発的に観劇を思い立ったミュージカルでそれなりの金額、がっつりミュージカルの観劇経験はほとんど無い……迷いが無かったとは言えませんでしたが、結果的にはかなり前方、端だったので出入りがしやすく、視界も音響面も問題無く快適でした。
では、本題の感想を。
映画を観てすぐの観劇となったため、脚本の違いにかなり意識が向きました。
ミュージカル版は、映画版よりもかなりコメディ感が強く、恋愛要素追加がされたりもしていて、結構雰囲気が違いました。
私は映画版の、外からの刺激で活き活きと変化していくチャーミングなシスターたちと、その変化を見て少しずつ気持ちが変わっていく修道長、デロリスとシスター達の友情が好きでした。そう、結局女と女の物語が好きなのです。
そんなどうしようもない根っからの女女オタクとしては、実はミュージカル版の脚本にはやや戸惑いが隠せず……。
映画では治安の悪い地域の警官ということで、結構荒くれ者なイメージが強かったサウザーさんが、ヒーローに憧れる青臭い青年警察官になっているのです。そしてデロリスとは高校時代の同級生で、ガンガンフラグを立てていく。
ギャングたちの活躍場面も増えていて、キャラクターも結構違う。子分だけでなくボスまでアホの子でした。ボスは終始キザでハイテンション、色男である子分たちはシスターを口説いて教会に入り込もうと画策したり。
一方、男性が活躍する場面に尺を割いた結果、シスターの描写は薄まってしまいました。
違う!私はキュートなシスターが見たいんや!女だ!女を出せ!!サウザー×デロリスのピュアラブコメは解釈違い!!!
と、途中で内心ギャング化していた厄介オタクです。
修道院側もかなりギャグ要素が強くなっていて、全体的な脚本は映画の方が好みでした。
面白いんですけどね!神父の調子に乗ったマイクパフォーマンスとか、ちょっと軽い修道長とか。
そんなギャップに驚きましたが、ミュージカル版はデロリスの内面がとても分かりやすくなっていたので、「天使にラブ・ソングを」という作品を少し違う角度から見て理解を深めるにはとてもいい舞台でした。
デロリスが一度修道院を去った後、今まで通り歌手として活躍する夢を歌うシーンがあります。そこではシスター達が頭を過ぎり、彼女たちに受け入れてもらえたことが嬉しかったと自覚して、コンサートのために修道院へ帰る。
幼少期からの問題児デロリスがシスター達との交流で得たものや、あの生活が悪くないと思うようになったきっかけを、私はこのシーンでようやく理解することができた気がしました。
映画は一回しか観ていないし、洋画慣れしていないからか、言い回しや表情から登場人物の内面や意図を読み取りきれていなかったのです。それを補完してくれるのがミュージカル版の脚本でした。
ミュージカル版はシスターの描写が薄いけれど、それは映画でたくさんやってくれてますしね。映画と舞台は別物別角度なんですなぁ。
映画版もミュージカル版もとにかくハッピーな作品であることは共通していますが、映画は「解放」、ミュージカルは「人に認められること」がより強いメインテーマなのかな、と思いました。
また、映画を観ていて感じたのですが、この作品にはどうしても宗教観が違うので共感しきれない部分があるのです。修道女がどれくらい神聖な存在なのかとか、どんなに悪者でも信仰心には背けないところとか。
日本だと「俺だって僧侶である前に男なんだぜ……」みたいなのがあるせいか、日本の聖職者ってなんだかんだ身近な存在じゃないですか?袈裟を脱いだら一般人、みたいな(信仰心が希薄な人間なので偏見だったら申し訳ない)。
だから映画版は、キリスト文化ってこういうものなんだな~と遠くに感じながら観ていたのですが、ミュージカル版はコメディ要素をかなり強めたことでキャラクターの面白さが前面に出て、そういったカルチャーギャップが薄まっていたように思います。
元々海外で作られた脚本らしいので、そういう意図があったわけでは無いでしょうが。
多少のカップリング解釈違いはありましたが、「天使にラブ・ソングを」という作品をより好きになれる機会になりました。作品に触れてまだ2週間も経っていないにわかですけど。
映画とミュージカル、両方観るのが良いな!と思います。
あと、やっぱりメアリー・ロバートちゃんは可愛い!映画でも舞台でも可愛い!
さすがメインヒロイン!え?ヒーローポジション?デロリスに決まってるでしょ!
歌をきっかけに肝が据わったロバートちゃん、ミュージカル版では修道女を辞めかねないくらいの心境の変化を見せるので、そこには少し驚きました。
ミュージカルでは男性キャストのハイトーンや個性豊かな歌声が飛び出したりしてすごかったのですが、私はやっぱりシスターたちの合唱が好きです。修道院で楽しく練習するシーンなんて、もうめちゃくちゃハッピーでした。
長机をくるくる回すシスター、その机に乗って楽しそうなシスター、最高。
修道服を白にしてギラギラに飾ったり、ラインダンスなんか踊ってみちゃったり。
ああいう華やかさは、生舞台ならではの演出ですよね。
そして劇中歌は全て生演奏!オーケストラピットなんて何年振りか……思わず終演後に覗き込んでしまいました。
もちろん、デロリスとシスター達の友情も健在です。
言葉に出していないのに表現したい歌がシスター達から出てくることへの感動をデロリスが語ると、それは神の御業だと修道長が言い、それに対して同じ調子で茶化すように人間の絆だと言うデロリス。すると今度は、それは両方の力だと修道長が言い、二人は笑い合う。
ラストでは「こいつはシスターなんかじゃねぇ」と言われるデロリスを「彼女はシスターです」と言い切る修道長、ギャングに追い詰められてピンチなデロリスをかばいに次々と飛び出してくるシスター達。
涙なしには見られません。
やっぱり女と女の友情はサイコーですわ。
デロリスのイメージに近いのは森さんかな?と思って森さんの回を見たのですが、朝夏さんのデロリスも観てみたいなーと思いました。